事件は終わったと思ったその瞬間、私は記録をもう一度開いた。
午前の証拠は温度を指していた。50個のうち5個が不良。温度が原因である確率は87.6%まで上がっていた。
ところが、午後の記録には50個中たった1個の不良しかなかった。確信は63.7%へ下がった。
数値は変わった。だからといって、午前の証拠が消えたわけではない。
「午後も不良が5個だったら、私は同じ判断をしただろうか?」
私はもう一度、刑事になってみることにした。
事件の記録をもう一度開く
第1編『沈黙の工場』では、温度と圧力という二人の容疑者を追った。第2編の数理解説では、判断を変えた計算の中身を確かめた。
今度は、同じ事件の条件を自分で変えてみる。下の実験は無作為に正解を選ぶものではない。入力した証拠が各仮説をどれほど支持するかを計算し、その結果を次の判断の出発点にする。
覚えておきたいのは三つ。事前確率は最初の見立て、尤度は各原因が今回の結果をどれほどよく説明するか、事後確率は証拠を受け入れた後の判断だ。原因の確率60%と、不良の発生確率8%は、別の問いへの答えである。
まず元の事件を選び、午前の証拠を反映する前に温度の確率がどちらへ動くか予想しよう。計算後は一緒に読む捜査ノートで「尤度 → 証拠の強さ → 判断の更新」をたどる。広い画面ではノートが本文の横にとどまり、小さい画面では実験の下で続けて読める。
ノートには、その段階で必要な理論と数値の代入が一緒に表示される。詳しい導出は、対応する第2編の節を新しいタブで開いて確認できる。
数値を自分で変えて実験してみましょう。 60・50・5・1は開始値です。事前確率・検査数・不良数の入力欄を押し、数値を変えてから証拠を反映してください。質問ボタンは例を呼び出すだけで、入力値を制限しません。
証拠が変われば、判断も変わる。
予想し、記録を変え、結果が変わった理由を説明してみましょう。
- 60%・最初の見立て
- 過去の事例で温度が原因だった割合。今回の事前判断です。
- 8% / 4%・原因ごとの特性
- 温度/圧力が原因の場合の製品1個当たりの不良確率。この実験では固定します。
- 5/50 → 1/50・新しい証拠
- 午前は不良5個、午後の新しい標本では不良1個。標本は重複しません。
H_Tは温度仮説、H_Pは圧力仮説です。60%と8%は別の問いへの答えです。
質問ボタンで例を呼び出すか、自分で数値を入力してください。 選ぶと質問と入力値が変わります。続いて証拠を反映すると、結果と捜査ノートが一緒に更新されます。
午後の証拠が圧力を支持しても、温度の方が有力だろうか?
午前の結論が午後の出発点になる過程を確かめます。
例は出発点です。数値は自分で変更できます。変更した段階から証拠を反映し、結果と捜査ノートを確認してください。
60・50・5・1は開始値です。事前確率・検査数・不良数の入力欄を押し、数値を変えてから証拠を反映してください。質問ボタンは例を呼び出すだけで、入力値を制限しません。
数値を変更して「証拠を反映」を押すと結果が更新され、右側の捜査ノートに、入力した数値を代入した数式と計算過程が表示されます。小さい画面では下の捜査ノートをご覧ください。
追加検査では検査数と観測した不良数を入力します。原因や証拠を無作為に生成するものではありません。
なぜこの計算になる?・捜査ノートへ ↓現在の判断
検査前
圧力が原因である確率 40.0%
検査前の判断です。まず午前の記録を反映してください。
記録を選ぶとその段階の捜査ノートを読めます。棒の緑は温度、黄土色は圧力です。
元の事件と並べて比較
| 段階 | 元の事件 | 自分の実験 |
|---|---|---|
| 検査前 | 60.0% | 60.0% |
| 午前の検査後 | 87.6% | 反映待ち |
| 午後の検査後 | 63.7% | 反映待ち |
元の事件は事前60%、午前5/50、午後1/50です。自分の入力値と比べてください。
段階別の結果表を見る
| 段階 | 不良数 / 検査数 | BF | 温度:圧力のオッズ | 温度の確率 |
|---|---|---|---|---|
| 検査前 | — | — | 1.500000 : 1 | 60.0% |
二つの仮説のどちらかが原因で、不良確率は8%・4%に固定され、原因が同じなら検査は独立と仮定します。結果はこの条件下での相対的な原因確率です。検査の間に設備条件や原因が変わった場合は、モデルを見直す必要があります。
三つの問いで捜査を続ける
午後も不良が5個だったら?
まず元の値で午前・午後の証拠を順に反映しよう。温度が原因である確率は60% → 87.6% → 63.7%と動く。
質問1・午後も不良5個を押す。事前確率60%と午前5/50はそのままに、午後の不良数だけを1個から5個へ変える。午前と同じ方向の証拠がもう一度入ると、確信はどう変わるだろうか。
実験後に解釈を確認する
温度の確率は約**97.1%**になる。午前と午後のベイズ因子は、どちらも約4.714。同じ方向の証拠を二度反映したため、温度対圧力の比が大きくなった。捜査ノートの「証拠の強さ」で両段階を比べてみよう。
最初から圧力を強く疑っていたら?
質問2・最初の見立てを30%にを押す。午前5/50・午後1/50という基準の記録に戻し、温度の事前確率だけを60%から30%へ変えて始める。
証拠は同じでも出発点が違う。何が変わり、何が変わらないのか。一緒に読む捜査ノートを見ると、同じ検査結果のベイズ因子は変わらず、事前オッズが変わったことが分かる。
実験後に解釈を確認する
確率は**30% → 66.9% → 33.4%**と動く。元の事件の60% → 87.6% → 63.7%と比較してほしい。BFは今回の証拠を比較する値なので変わらない。変わったのは出発点であり、そのため事後確率も変わった。
不良が一つも出なかったら?
質問3・午後の不良が0個を押す。事前確率60%、午前5/50で始め、午後だけを0/50に変える。
不良がないことも証拠になる。ただし、ここで計算しているのは事件で設定した二つの仮説の相対的な可能性だ。観測された不良率が下がっただけで、原因がなくなったと断定する計算ではない。
実験後に解釈を確認する
温度の確率は午前の87.6%から約**45.7%**へ下がる。良品50個も尤度に含まれ、今回の証拠は不良確率の低い圧力仮説に有利になる。「正常な設備」という第三の仮説を計算したわけではないため、原因が消えたという結論に読み替えない。
次のロットの記録を引き継ぐ
第1編のエンジニアは、次のロットからもう50個サンプルを取ろうと提案した。二回の検査後、次の検査記録を追加すれば、その場面を自分で続けられる。不良数はあらかじめ決めていない。新しい記録を入れ、現在の結論が次の判断の出発点になる様子を確かめよう。
追加するのは、新しく観測した標本だけだ。反映済みの午前・午後の記録を再び入れると、同じ証拠を二度使うことになる。記録が増えるたびに確信が高まるとも限らない。原因と不良確率が同じという仮定の下で、標本ごとに上下しながら判断を積み重ねる。
分けて計算しても、まとめて計算しても同じか?
逐次計算と一括計算を比較で、第2編9節の計算を自分で検算しよう。元の事件では、50個ずつ二回に分けても、100個中不良6個として一度に計算しても、温度の確率は約63.7%だ。
これは、同じ出発点から別々に計算した二つの結果である。二度更新済みの判断に、合算した100個を追加するのではない。検査条件が維持され、同じ原因の下で各結果が独立なら、各BFの積は全証拠のBFと一致する。
確信の大きさだけでなく、変わった理由を読む
確率の棒が動くだけでは捜査は終わらない。
どんな証拠が入り、それがどちらの仮説にとって自然で、前の判断に何を加えたのかを説明できる必要がある。一緒に読む捜査ノートで、入力値を代入したベイズ因子とオッズの展開を確かめよう。
この実験は、温度か圧力のどちらかが原因で、不良確率がそれぞれ8%・4%に保たれるという事件の条件を使う。検査の間に設備条件を変えたり別の原因が介入したりした場合は、その変化を説明するモデルを先に見直す必要がある。
午後の証拠が圧力を支持しても、累積判断では温度の方が有力なことがある。今回の証拠が指す方向とこれまでの証拠を合わせた判断は、同じ問いではない。午前までに積み上げた判断に新しい証拠を反映したからだ。
自分の言葉で説明してみよう。「今回の証拠は何を支持したか。前の判断から何を引き継いだか。だから確率はなぜ変わったのか」。原因確率だけで保全の要否を自動決定することはしない。追加検査費用、設備停止費用、不良流出リスクも併せて考えるのが、その次の判断だ。
記録を閉じる前に、最後に問いかける。
「私は最初の確信を守っているのか。それとも新しい証拠を受け入れているのか?」



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